大空の忠犬

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その少年ヴァンパイアに月。二幕の30。

2009-09-24 16:37:09 | 獄ハル






その少年ヴァンパイアに月。






「ハックション!」
盛大なくしゃみをした、三浦ハルは
一瞬顔をしかめると痛そうに唇に手を当たる。

「はひ、くちびる切っちゃいました…」
隣を歩いていた獄寺隼人はびくりとして、
目を丸くすると、
ぷいっとあさっての方向を向いた。

「…あほ…」
「はひ!なんでそこでアホなんですか!
それとこれとはまったく別問題じゃないですか!」
ハルは獄寺に食って掛かるが
獄寺はめんどくさそうに視線を外したままだ。

「リップ買い忘れて今日はしかたなく…

…そういえばこんな会話前にもしたような…?」

そういってハルが思考を巡らそうと眉をしかめた時。

「コンビニ…」

唐突に彼はハルの腕を引っ張って
バツの悪そうにコンビニがある方へ方向転換した。

ハルは不思議そうに彼の横顔を見つめたが
獄寺は苦虫をつぶしたような顔して始終黙っていた。



…一体なんなんでしょうこの態度?

ハルは首をかしげた。

…だって彼女は知らないのだ。



彼女の唇が切れたあの日の出来事を。










それは、獄寺隼人中学三年の冬。

今日のように、からからに晴れて乾燥していた
ある日の出来事。















「ハックション!」
盛大なくしゃみをした三浦ハルは
一瞬顔をしかめると痛そうに唇に手を当てた。

「はひ、くちびる切っちゃいました」

「…あほ…」
「はひ!なんでそこでアホなんですか!
それとこれとはまったく別問題じゃないですか!」
ハルは獄寺に食って掛かるが
獄寺はかったるそうにため息をついただけだった。

「リップ買い忘れて今日はしかたなく…いたいです」

ぺろり。と
血を舐めた彼女の舌が妙に
艶めかしく映ったが、

獄寺は片方の眉を吊り上げ
あえてムスッと不機嫌を装った。


彼。

獄寺隼人はヴァンパイアだ。
ヴァンパイアといっても現代のヴァンパイアは
人とさして変わらない。
昼間より夜の方が、感覚がきくとか
少々、人より長生きで力が強いとか
まぁそんな程度である。

普通より血に過敏に反応してしまう
…本当にそんな程度である。

そう…その程度の問題…のはずだ。

決して自分は三浦ハルのことなんて気にしていないし
むしろ…嫌っている…はずだ…

だが、このところ
…どうもおかしい。

彼女が近くにいるとどうも引っかかるというか。
イラつくというか、
ざわつくというか。


今も彼女の血だからか余計に
過剰反応している気がする。


いや…でも
それはきっと気のせいだ。






…だって。








「ツーナーさーん!」


三浦ハルは学校の校舎内で補講中の綱に大きく手を振った。

さながら、あたりにはハートが飛んでいるような様子で。

綱はグランドの端っこで力いっぱい手を振るハルへ向けて
ぎこちなく手をふりかえした。

もれなく、苦笑いを浮かべて。






…だってあいつは十代目に迷惑をかける。







ハルは綱にあいさつを終えると
くるりと獄寺の方へ向き直った。



「…そんなわけで獄寺さんは
ハルとキャッチボールをしましょう!」








「…はぁ?」





(…てか、本当にこいつ意味わかんねぇし)




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