第八芸術鑑賞日記

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ビー・ムービー(1/26公開)

2008-07-22 08:58:03 | 08年1月公開作品
 08/2/18、丸の内TOEIにて鑑賞。6.0点。
 擬人化されたミツバチたちの活躍を描いたドリームワークスによるフルCGアニメーション。
 『シュレック』('01)のドリームワークスらしく、子供向け健全アニメとしての体裁を持ちつつ、大人が楽しめる各種パロディとブラックユーモアで溢れた一本である。しかしはじめに言ってしまうと、総合的には失敗作だと思う。商業映画として対象年齢がはっきりしない作風というのは、よく言えばどの年齢層にも楽しめるもの(ファミリー御用達)ということだが、場合によっては不快な印象をも与えかねない。本作でのブラックユーモアの数々(ポリスのスティングやレイ・リオッタを実名の本人役で出したり、「クマのプーさん」を揶揄したり)は、大人の観客としての俺には正直楽しめてしまったのだが、そうしたシーンにおいて「意味がわからなくても動画を見ているだけで楽しい」タイプのギャグを盛り込む工夫を怠っているので(スティングへのインタビューシーンなど)、残念ながら作り手の悪ノリだと言わざるをえないだろう。
 ストーリー上のクライマックスが法廷劇として展開されるというのも、絵が動くことの(アニメーションとしての)魅力を最大限に発揮しえていないものとして見えてしまう。「人間が蜂蜜を搾取している」といってミツバチたちが裁判に訴えるという設定はアイデアとしては面白いのだが、もう少し工夫が欲しかったと思う。この裁判シーンもそうだが、主人公が「一生定まった仕事(ルーティンワークの一工程)をするなんて嫌だ」とハチ社会に反発するという設定など、せいぜい中高生以上でないと実感しにくいテーマが前面に出てきているというのも、本作が表面上のターゲットとしている子供たちに対して不親切な気がする(アメリカの子供にはピンと来るのかなぁ)。それから、「あっという間に成長して大人になる」とか、「分業体制が発達している」とか、ミツバチの生態をデフォルメしつつ紹介しようとする一方で、「働き蜂は雌しかいない」など無視されている点もあって(こういうのをやたらと批判する人というのも器量小さいなぁと呆れるが)、ちょっと中途半端かもしれない。で、いっそ子供向けというのは建前だけなんだと開き直ればいいのかといえば、当然ながら大人を心底楽しませるにはやっぱり甘い。
 というわけで全体的には難点が目立つように思うのだが、しかし飛びまくるミツバチ視点でのCGアニメーションとしては実に楽しく、実写では不可能なそのカメラの動きだけでも90分をつぶす甲斐はある(これで評価は大幅に加点)。
 しかし一ヶ月も経たずに字幕版が打ち切られてしまっていたので、吹き替えで観たのは痛恨の極みだった(本人役出演のスティングの声とか字幕でなければ全く意味がない……)。


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