第八芸術鑑賞日記

評価は0.5点刻みの10点満点で6.0点が標準。意見の異なるコメントTBも歓迎。過去の記事は「index」カテゴリで。

広告

※このエリアは、60日間投稿が無い場合に表示されます。記事を投稿すると、表示されなくなります。

秒速5センチメートル(3/3公開)

2007-03-26 00:54:59 | 07年3月公開作品
 3/9、シネマライズにて鑑賞。7.0点。
 映画の命は編集だ。もちろんハナシがつまらなきゃ面白くなりようもないし、個々のショットが酷かったらとても見れたもんじゃないし、俳優が揃って冴えない顔ばかりしていたら盛り下がるだろう。だがそれでも、編集こそが映画の映画たるゆえんだと、(少なくとも今の)俺の映画観は主張する(まぁもう少し広げていえば、編集を含めたポストプロダクション全般だ)。
 適当に撮った顔のアップが、葬式のショットで挟めば悲しそうに見え、観光地のショットで挟めば楽しそうに見える。そういうモンタージュ理論の発見こそ映画史上の最大の事件であって、だから常に映画史の端緒として扱われるリュミエール兄弟は、あくまで前史という位置づけにすべきだろうとしか思えない。
 長回しとかワンシーンワンショットとか、そういった技法も「編集」という作業の存在を前提にしてこそ輝くのであって、そうでなければただの冗長な動画の垂れ流しにすぎない。


 その意味で、本作の上映時間の九割に対しては5.5点くらいしかつけられないが、ラスト5分間には9.0点くらい献上したい。いや、もう部分限定なら10点でもいい(7.0点というのはその妥協点だ)。
 山崎まさよしのフォーキーな歌を(おそらく)フルレングスで流し、その間に短いカットを目まぐるしく繋いでいく。台詞も何もない。出てくるショットのほとんどはそれまでのシーンからの抜粋であり、話が進展するわけではない。回想のような位置づけのシークエンスだ。だがこの五分間に、本作の全てが賭けられている。
 「連作短編アニメーション」と銘打たれた本作の上映時間はわずかに60分。描かれる二つの初恋の物語は、いずれもシンプル極まりなく、どこまでも青臭く、演出も限りなくベタだ。
 そんな凡庸な物語から掬い取られたショットたちが、各々は瞬時に消えてしまいながらも数積み重なって、二度と戻らない日々への郷愁を完璧に表現する。それまでの55分間は長い前フリだ。


 アニメ作品としての本作については、賛否分かれるところだろう。基本的にリアル志向な背景の上を、いかにもアニメ然としたキャラクターが動き回るのには、大きな違和感を覚える人が大半のはずだ。駅の看板や現実の街並みまで完璧に再現しようとしている背景美術に対し、クリクリとやたら目の大きいキャラクター造形。チグハグな印象は否めない。
 ただし、個々の画のクオリティは圧倒的に素晴らしい。これが三作目となる監督の新海誠は(俺は本作で初見)、25分間のデビュー作『ほしのこえ』をたった一人で作りあげた職人。
 また、鹿児島を舞台にした第二話では海や空がフィーチャーされるが、(ロケット打ち上げのシーンに顕著なように)派手な色彩によってかなりファンタジックな味わいが加えられており、独特な世界を作り上げている。


 第一話での節操の無いモノローグの使い方や、第二話での類型的な人物造形など、全編通じて恥ずかしいくらいに青臭いのは事実。また、あまりにも狭く自己完結した印象の作品世界に息苦しさを覚えるようにも思う。
 それでも、このラスト5分間をスクリーンで見逃すのはあまりにもったいない。

『映画・DVD』 ジャンルのランキング
コメント   トラックバック (11)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 善き人のためのソナタ(2/10... | トップ | 太陽(8/5公開) »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

11 トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
「秒速5センチメートル」レビュー (映画レビュー トラックバックセンター)
「秒速5センチメートル」についてのレビューをトラックバックで募集しています。 *「桜花抄」「コスモナウト」「秒速5センチメートル」 *キャラクター(声優):遠野貴樹(水橋研二)、篠原明里(近藤好美/尾上綾華)、澄田花苗(花村怜美)、他 *原作・脚本・監督:新海...
秒速5センチメートル (メルブロ)
秒速5センチメートル 上映時間 1時間3分 監督 新海誠 出演(声) 水橋研二 近藤好美 尾上綾華 花村怜美 評価 8点(10点満点) 会場 シネマライズ  最近まで全く知らなかった作品だったんですけど、結構鑑賞するのに参考にしている「超映画批評」で、ア...
『秒速5センチメートル』 (たーくん'sシネマカフェ)
最近のアニメはあなどれない!先日観た「時をかける少女」もそうですが今回の「秒速5センチメートル」もよかった監督・原作・脚本:新海誠 主題歌:山崎まさよし  声:水橋研二、近藤好美、尾上綾華、花村怜美  上映時間:63分-Story-お互いにひかれ合いながら....
One more time, One more Chance~「秒速5センチメートル」~ (ペパーミントの魔術師)
まさやんの「One more time,One more chance」が 主題歌に使われたとあっては 見ないわけにはいかんでしょ~。(また不純な動機) この歌に関しては以前 映画「月とキャベツ」のレビューでも触れてますので コチラにもリンクさせときますね。 「One more time One more cha...
「秒速5センチメートル」映画館レビュー 答えはない (長江将史~てれすどん2号 まだ見ぬ未来へ)
答えは与えてくれない。でも美しい映像にあふれている。だから、涙があふれてくる。
秒速5センチメートル 75点(100点満点中) ((´-`).。oO(蚊取り線香は蚊を取らないよ))
パーマン2号も遅れるな♪ 公式サイト 2000年に一人で製作したCGアニメーション短編『彼女と彼女の猫』を発表し、日本中のインディーズ映画界で一躍話題となり、その後同じく一人で作り上げたSF恋愛アニメ『ほしのこえ』にて一般アニメファンにも知られる存在に。2004...
秒速5センチメートル ~ 新海誠の作品にみる映像美と心の郷愁 ~ (Prototypeシネマレビュー)
~ 新海誠の作品にみる映像美と心の郷愁 ~ その映像美や心の描写が注目されるアニメーション「秒速5センチメートル」。まず最初に言っておきます。この作品、実は見ていません。じゃあレビューなんざ書くなよと怒れられてしまいそうですが、この新海誠 氏の作品につい...
秒速5センチメートル ~ 新海誠の作品にみる映像美と心の郷愁 ~ (Prototypeシネマレビュー)
~ 新海誠の作品にみる映像美と心の郷愁 ~ その映像美や心の描写が注目されるアニメーション「秒速5センチメートル」。まず最初に言っておきます。この作品、実は見ていません。じゃあレビューなんざ書くなよと怒れられてしまいそうですが、この新海誠 氏の作品につい...
秒速5センチメートル (ネタバレ映画館)
秒速5センチメートルは時速になおすと0.18km/hだ。
秒速5センチメートル (描きたいアレコレ・やや甘口)
すみません!ブログ放置していました...。また、ぼちぼち、見てね。 今週は『マイティ・ハート』も『ミッドナイト・イーグル』もイマイチ観る気がせず、スルー。 『4分間のピアニスト』も『転々』等、単館系を観ようかと思
【映画】秒速5センチメートル (新!やさぐれ日記)
■状況 テアトル宇都宮にて特別観賞価格(割引)で観賞 ■動機 映像がキレイだったから ■感想 少し切なく少し懐かしく少し優しくなれる映画 ■あらすじ 小学校の卒業と共に会うことがなくなった遠野貴樹と篠原明里は、お互いに特別な思いを抱えていた。日々を重...