狐の日記帳

倉敷美観地区内の陶芸店の店員が店内の生け花の写真をUpしたりしなかったりするブログ

深夜の集会その5。

2017年04月20日 12時07分28秒 | 知人、友人に関する日記





 「では皆さん。さういふふうに私達の御花見の宴を欠席した狐さんに如何なる制裁を与えるべきか何かご存知ですか?」
 知人は卓上に置かれた映寫機で壁に映し出されている狐の姿を指さしながら皆に問ひをかけました。
 一人の友人が手をあげました。狐も手をあげやうとして急いで其の儘止めました。
 さうか。今宵は私を糾弾する夜會であつたか。知人は知人が主催する宴を私に無視されて御怒りのやう。狐は知人や友人達が自分をどのやうに責め立てるのかどきどきわくわくする氣持がするのでした。
 ところが知人は早くも狐のその様子を見附けたのでした。
 「狐さん。あなたは分かつてゐるのでせう?」
 狐は勢いよく立ち上がりましたが、立つてみるとはつきりとそれを答へることができないのでした。
 狐の友人のうちの一人がふりかへつて狐を見てくすつと嗤ひました。
 狐はもうどぎまぎしてまつ赤になつてしまひました。
 知人はまた云ひました。
 「あなたは何か期待していますね? それは大體何でせう?」
 そんなことは人前では云えないと狐は思ひ、今度も直ぐに答へることができませんでした。
 知人はしばらく困つたやうすでしたが、目を狐の友人達に向けて「では貴方が答へなさい」と友人の一人を指名しました。
 するとその狐の友人ももぢもぢ立ち上つたままやはり答へができませんでした。
 知人は意外なやうにしばらくぢつと狐の友人を見てゐましたが、急いで「では。よし」と云ひながら、壁に映し出されている狐の姿を指しました。
 「あなたは今夜、唯、攻められたひ。狐さん、さうでせう?」
 狐はまつ赤になって頷きました。けれどもいつか狐の眼の中には涙がいつぱいになりました。
 さうだ。私は今夜、惟、攻められたひのだ。
 それは狐が内緒にしてゐる心の中に潜んでゐるいやらしい願望なのだ。
 いやらしい。さう考へるとたまらないほど自分があはれなやうな氣がするのでした。

 知人はまた云ひました。
 「狐さん。あなたが攻められたひのならば放置します」
 放置……。
 「皆さんも狐さんには触れてはいけません。今宵は狐さんは放置です。よいですね?」
 ごめんなさいごめんなさい。いやらしいことを想像してしまってごめんなさい。宴を欠席してごめんなさい。もうしません。

 「では今日の集会はここまでです」
 知人のお宅の中はしばらく片付けの音がいつぱいでしたが、まもなく皆はきちんと禮をして知人のお家を出たのでありました。


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