狐の日記帳

倉敷美観地区内の陶芸店の店員が店内の生け花の写真をUpしたりしなかったりするブログ

闇のあるところに光を。

2017年07月15日 21時10分48秒 | VSの日記







 本日7月15日は、第1回十字軍で十字軍によりエルサレムが陥落した日で、ワット・タイラーの乱の思想的指導者ジョン・ボールが最も重い首吊り・内臓抉り・四つ裂きの刑により処刑された日で、若狭国小浜に南蛮船で象が日本に初上陸した日で、イングランド王ジェームズ2世の甥でセッジムーアの戦いで敗れたモンマス公爵ジェームズ・スコットが刑死した日で、エジプト・シリア戦役の途上フランス軍人ピエール=フランソワ・ブシャールによってロゼッタ・ストーンが発見された日で、東京巨人軍と大阪タイガースが初対戦した日で、1940年に予定されていた東京オリンピックの開催権を日本政府が閣議で返上することを決定した日で、GHQが新聞社16社・通信社3社の事前検閲を廃止して事後検閲に移行した日で、中央線三鷹駅構内で無人電車が暴走し民家に突入した日で、河野一郎邸焼き討ち事件が起こった日で、キプロスでギリシャの支援を受けたギリシャ併合強硬派がクーデターを起こしてマカリオス大統領を追放した日で、台湾で1949年以来続いてきた戒厳令が解除された日で、原油高を受けて日本の17漁業団体の漁船約20万隻が一斉休漁した日です。

 本日の倉敷は曇りのち晴れでありましたよ。
 最高気温は三十三度。最低気温は二十四度でありました。
 明日は予報では倉敷は曇りとなっております。







 今は昔。狐がまだ幼かった頃のこと。

 枕に就いたのは黄昏の頃。
 之を逢魔時、雀色時などといふ一日の内で人間の影法師が一番ぼんやりとする時に起つた事。
 狐が十の夏のはじめ。


 部屋は四疊敷けた。
 薄暗い縱に長い一室、兩方が襖で他の座敷へ出入が出來る。
 詰り奧の方から一方の襖を開けて、一方の襖から玄關へ通拔けられるのであつた。
 一方は明窓の障子がはまつて、其外は疊二疊ばかりの漆喰叩きの池で金魚が居る。

 其日から數へて丁度一週間前の夜。
 夕飯が濟ん部屋の卓子の上で燈下に本を讀んで居た。
 前後も辨へず讀んで居ると、私の卓子を横に附着けてある件の明取りの障子へ、ぱら/\と音がした。
 忍んで小説を讀む内は木にも萱にも心を置いたので、吃驚して振返へると又ぱら/\ぱら/\といつた。

 雨かしら。時しも夏のはじめなり。
 洋燈に油をさす折りに覗いた夕暮れの空の模樣では、今夜は眞晝の樣な月夜でなければならないがと思ふ内も猶其音は絶えず聞こえる。
 おや/\裏庭の榎の大木の彼の葉が散込こむにしては風もないがと、然う思ふと、はじめは臆病で障子を開けなかつたのが、今は薄氣味惡くなつて手を拱ぬいて思はず暗い天井を仰いで耳を澄ました。
 一分、二分、間を措いては聞こえる霰のやうな音は次第に烈しくなつて一時は呼吸もつかれずものも言はれなかつた。
 しばらくして少し靜まると、再び怠けた連續した調子でぱら/\。

 思ひ切つて障子を開けた。
 池はひつくりかへつても居らず、羽目板も落ちず、月は形は見えないが光は眞白にさして居る。
 とばかりで、何事も無く手早く又障子を閉めた。
 音はかはらず聞こえて留まぬ。
 何だか屋根のあたりで頻りに礫を打つやうな音がした。ぐる/\渦を卷いちやあ屋根の上を何十ともない礫がひよい/\駈けて歩行く樣だつた。




 一週間が經つた。
 黄昏は少し風の心持ち。狐は熱が出て惡寒けがしたから掻卷にくるまつて寢た。
 眠くはないので、ぱちくり/\目を明いて居ても、物は幻に見える樣になつて、天井も壁も卓子の脚も段々消えて行く心細さ。

 枕頭へ……ばたばたといふ跫音。
 ものの近寄る氣勢ひがする。
 枕をかへして頭を上げた。
 が、誰れも來たのではなかつた。

 しばらくすると再び、しと/\しと/\と摺足の輕い譬えば身體の無いものが踵ばかり疊を踏んで來るかと思ひ取られた。
 また顏を上げると何にも居らない。
 其時は前より天窓が重かつた。
 顏を上げるが物憂かつた。

 繰返へして三度、また跫音がしたが、其時は枕が上がらなかつた。
 室内の空氣は唯彌が上に蔽重つて、おのづと重量が出來きて壓へつけるやうな!
 鼻も口も切なさに堪へられず、手をもがいて空を拂ひながら呼吸も絶え/″\に身を起こした。
 足が立つと思はずよろめいて向うの襖へぶつかつたのである。
 其のまゝ押開けると、襖は開いたが何となくたてつけに粘氣りけがあるやうに思つた。
 此處では風が涼しからうと、其れを頼みに恁うして次の室へ出たのだが矢張り蒸暑い。
 押覆つたやうで呼吸苦い。
 最う一つ向うの廣室へ行かうと、あへぎ/\六疊敷を縱に切つて行くのだが瞬く内に凡そ五百里も歩行いたやうに感じて、疲勞して堪へられぬ。
 取縋るものはないのだから、部屋の中央に胸を抱いて、立ちながら吻と呼吸をついた。

 かの恐しい所から何の位ゐ離れたらうと思つて怖々と振返へると、ものの五尺とは隔たらぬ私の居室からちうと鳴き声がする。
 ちう?
 思はず駈け出した私の身體は疊の上をぐる/\まはつたと思つた。
 其のも一つの廣室を夢中で突切つたが、暗がりで三尺の壁の處へ突當つて行處はない。
 此處で恐しいものに出遭うのかと思つて、あはれ神にも佛にも聞こえよと叫んだ。
 小さな獣め。ちうちう鳴くあ奴等。天井裏で跋扈するだけでなく室内にまで版図を広げたか。怖いよぉ。

 熱に魘されながら叫んでいた私は其の儘気絶した。
 ちうちう鳴くあ奴等がどうなったのかは知らない。
 其の日からあ奴等の足音は聞こえなくなつた。
 何処かにお引越しをしたのだろうと思ふ。


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