狐の日記帳

倉敷美観地区内の陶芸店の店員が店内の生け花の写真をUpしたりしなかったりするブログ

悪いけれど葡萄酒ならば自分の口唇ダイレクトで。グラスよりも其の御口に注いで載きたいのだもの。

2017年04月18日 11時16分22秒 | VSの日記







 或る夜の事。

 狐は先輩と一緒に或るパブリック・ハウスのカウンター席に腰をかけて、絶えずホットミルクを舐めてゐた。
 狐は以前に友人に「愛しの人に媚びを売りたいのだけれどもどうしたらよいものか?」と質問されて返答に困ったことを思い出し、如何答えればよいのか経験豊富な先輩に尋ねてみた。
 「愛しの人に媚びを売りたい?」
 先輩は頬杖をした儘、極めて無造作に私に呟いた。
 「ならば取敢えずは愛しのお方の前で猫耳をつけるがよい」
 猫耳???
 「媚びを売るならばいつそのことあざと過ぎるくらい媚びを売つたほうがよい。猫耳をつけて媚びを売つて売つてて売りまくるのだ。バニーちゃんでもよい」
 バニーちゃん……。
 「要は相手を萌えさせて燃えさせればよいのだ。恥じらいつつ恥を捨てよ」
 恥じらいつつ恥を捨てる……。
 「愛しのお方に媚びを売るのならば捨て身でなければならぬ。突貫せよ」
 捨て身……。突貫……。

 因みに猫耳とかバニーちゃんの衣装とか何処で手に入るのですか? と狐は先輩に尋ねました。
 すると先輩は目を綺羅綺羅と輝かせて「ん? 実物を見てみたいかね? 着てみたいかね? 私は持つているぞ」と応えました。
 持つているんですか! 何でそんな物を持つているのですか?
 「勿論、まいすい~とはに~に媚びを売る為だ!」
 ……。左様でございますか。
 「私の部屋に來れば猫耳とかバニーちゃんの衣装とか他にも色々あるぞ。今から私の部屋においで」
 ……。否です。
 「君の猫耳姿とかバニーちゃん姿が見たい! おいでよ」
 ……。否です。先輩は男女を問わず襲いかかる人です。怖いです。
 「大丈夫。怖くない怖くない。一寸だけ一寸だけだから。ね? ね?」
 ……。否です。私は先輩に美味しくいただかれたくはありません。
 「襲わないから。何もしないから。猫耳姿を見せてくれるだけでよいから」
 ……。否です。私は先輩に媚びを売りたいわけではないのですから。
 「大丈夫。萌えても燃えても襲わないから。一寸だけ一寸だけだから。ね? ね?」
 ……。否です。先輩は襲う気満々です。先輩の部屋に行けば私は先輩に美味しくいただかれてしまいます。絶対に否です。
 「では私が着るから。私がバニーちゃんの衣装を着るから」
 だから私は先輩に萌えたいとか燃えたいとか思つていないのですから。否です。
 「むぅ」


 先輩はお喋りを止めて考え込んだ。
 狐の言葉は先輩の心を知らない世界へ神々に近い世界へと解放したのかもしれない。
 狐は氷とカルーアを注文し、割賦の中でホットミルクと混ぜ合わせてカルーア・ミルクを作り、舐めた。
 先輩は言つた。「いけず」

 狐は何か痛みを感じた。が、同時に又歓びも感じた。
 人の欲望とは、様々なものであるな。面白ひものだ。





 そのパブリック・ハウスは極小さかつた。
 しかしパンの神の額の下には赫い鉢に植ゑたゴムの樹が一本、肉の厚い葉をだらりと垂らしてゐた。


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