永子の窓

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蜻蛉日記を読んできて(206) その1

2017年07月23日 | Weblog
蜻蛉日記 下巻 (206) その1  2017.7.23


『臨時の祭りあさてとて、助にはかに舞人に召されたり。これにつけてぞめづらしき文ある。『いかがする』などて、いるべきものみなものしたり。

◆◆賀茂の臨時の祭が明後日ということで、助が急に舞人にめされました。このことで珍しくあの人から手紙がきました。「支度はどうしている?」などとあって、必要な支度品の全てを持ってきてくれました。◆◆


「試楽の日あるやう、『けがらひの暇なるところなれば、内裏にもえまゐるまじきを、まゐり来て見出だし立てんとするを、寄せ給ふまじかなれば、いかがすべからん、いとおぼつかなきこと』とある。胸つぶれて、いまさらになにせんにかと思ふこと繁ければ、『疾くさうぞきて、かしこへをまゐれ』とて、いそがしやりたれば、まづぞうち泣かれける。もろともに立ちて、舞ひとわたりならさせて、まゐらせてけり。」

◆◆試楽の日にあの人から言ってきたのは、「穢れゆえ出仕を控えているので、宮中へも参るわけにもいくまいと思うので、そちらへ行って、支度を手伝って送り出してやろうと思うのだが、あなたが寄せ付けてくださらないだろうから、どうしたものだろうか。とても気がかりだが」と言ってきました。私は気も転倒して、今さら来てもらってもどうしようもないことという思いがして、またどうしたものかとも思うので、助に「早く装束をつけて、あちら(兼家邸)へ行きなさい」と言って、せき立てて行かせると、そのあと、何とも言えず涙がしきりにこみ上げてくるのでした。あちらではあの人が助の介添えをして、舞をひととおり練習させて、宮中に参上させました。◆◆



「祭の日、いかがは見ざらんとて出でたれば、北の列になでふこともなき檳榔毛、後、口うちおろして立てり。口のかた、すだれの下より、きよげなる掻練に、紫の織物重なりたる袖ぞさし出でためる。」

◆◆賀茂の臨時祭当日、私が是非とも見物したいと思って出かけたところ、道の北側に、何ということもないありふれた檳榔毛の車、前後の簾を下ろして止まっていました。前あの方の簾の下から、きれいな掻練(かいねり)に紫色の織物の重なった袖が出衣(いだしぎぬ)に差し出されているようです。◆◆


■臨時の祭り=賀茂の臨時祭。四月例祭(賀茂の祭)に対して十一月に行われる。この年は十一月二十三日。

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