徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「やがて来たる者へ」―子供たちにいったい何が残せるのか―

2012-01-28 22:30:00 | 映画


     このところずっと、厳しい寒さが続いている。
     身も心も、凍りつきそうだ。

     この作品も、実は温もりのある心までが寒くなる、しかし心を打つ物語だ。
     1944年9月29日未明から8日間、北イタリア・ボローニャ近郊の山林で、ナチス・ドイツ軍による、最大の住民虐殺事件が起きた。
     史上、 『マルザポットの虐殺』と呼ばれている。
     パルチザン掃討が目的だったが、犠牲者771名のうち、多くは子供、女性、高齢者だった・・・。

     この第二次世界大戦中の歴史的事件を、一少女の眼差しで捉えた、ジョルジョ・ディリッティ監督イタリア映画だ。
     題名の「やがて来たる者」というのは、未来に生きるものを意味する。
     少女の澄んだ瞳は、何を見つめているのだろうか。

   
1943年12月、イタリア北部の都市ボローニャに近い、小さな村・・・。
ドイツ軍とパルチザンの攻防が、激しさを増していた。
静かなこの山林にも、戦争の影が徐々に忍び寄ってきていた。

両親や親戚と暮らす8歳のマルティーナ(グレタ・ズッケリ・モンタナーリ)は、大所帯の農家の一人娘であった。
生まれたばかりの弟を、自分の腕の中で亡くして以来、口をきかなくなってしまっていた。
そのために、学校でいじめられたりもするが、豊かな自然の中で、家族に見守られて多感な日々を過ごしていた。

ある日、母のレナ(マヤ・サンサ)は、再び妊娠し、マルティ―ナと家族は、新しい子の誕生を待ち望むようになった。
戦況がいよいよ悪化し、ドイツ軍が出入りする中、地元の若者たちは、密かにパルチザンとして抵抗を続けていた。
幼いマルティーナには、どちらが敵でどちらが味方かよくわからない。
そして、44年9月29日の早朝、レナは男の子を無事出産する。
しかし、一家の喜びもつかの間で、とうとうドイツ軍がパルチザンを掃討する作戦を開始し、大挙して村に乗り込んできた・・・。

このドラマにおける歴史の目撃者は、口をきかない8歳の少女だ。
キャストは、ほとんどが地元を中心に選ばれた素人で、家や衣装、家畜にいたるまで、出来る限り当時の生活を忠実に再現している。
少女のマルティーナは、最初から最後まで一切言葉を発しない。
マルティーナの眼は、カメラの眼となって、そこに起きていることの理不尽を、淡々と写し撮っていくのだ。
少女マルティーナの瞳に映るのは、敵味方に関係なく、子供たちを育て、恋をし、ごく普通の生活を送っていたのに、戦争という時代の本流に呑み込まれていった人々の姿である。

ドラマ前半は、平和で穏やかな山村の生活が描かれている。
これが後半に入ると、がぜん兵士たちが住民を巻き込んだ戦いとなって、平和な村は戦場と化していくところは胸がつまる。
この作品には、いまもなお、アフガニスタンなど世界中で絶え間なく続いている戦争の悲劇に対して、このような過ちを二度と繰り返してはならないという、製作者サイドの未来への願いがこめられている。
戦争と平和という普遍的なテーマと、人間への深い洞察がある。
山間に生きる人々の、素朴な暮らしや、季節に彩られた風景を丹念に紡いで、その映像美は極めて味わい深い。
出演はほかに、現代のイタリアを代表する若手女優アルバ・ロルヴァケルらの名も見逃せない。

ドイツ兵による住民虐殺は、イタリア各地で繰り返されるが、平和で穏やかなこんな小さな村で、無抵抗の住民まで殺すことにどんな意味があるのだろう。
この『マルザポットの虐殺』が最も大規模で、最後に、パルティザンの総蜂起によって、ドイツ軍とファシスト政権からのイタリア全土の開放がなされて、イタリアの戦乱は終息を迎えることになる。
イタリアでの、ナチスによる大虐殺を描いた映画に、アメリカスパイク・リー「セント・アンナの奇跡」があるが、こちらの方はイタリアでは成功しなかった。
それは、強いリアリズムの欠落した映画として撮られていたからだといわれる。

このジョルジョ・ディリッティ監督イタリア映画「やがて来たる者へ」は、大きな意味で、人間そのものを問うている作品だ。
小品だが、作品は丁寧でよくまとめられている。
ラストシーンのマルティーナには、心を揺さぶられるものがあり、まだこの世界には希望があることを確信させる。
そして、この作品もまた真実の物語なのである。
   [JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点

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ジョルジョ イタリア映画 ボローニャ パルティザン ファシスト政権 戦争と平和 自然の中で 北イタリア 第二次世界大戦中
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2 コメント

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第二次世界大戦 (茶柱)
2012-01-28 21:35:17
いろいろなことが起きましたが,一番よく解らないのが「なぜイタリアがファシスト政権になったのか」ですね。
ファシズムとイタリアとは一番相性が悪い気がするんですが・・・。
イタリアというと・・・ (Julien)
2012-01-29 09:24:13
やはり、ムッソリーニでしょうか。
第二次世界大戦の前に、イタリアは社会主義、共産主義が勢いを増していて、その状況が国家主義者の反撃を生み出し、社会主義勢力との実力による対決が始まったと伝えられます。
ムッソリーニは、この武装攻撃の先陣をきって、ファシズムの機構を作り上げ、その後20年以上もこの支配が続いたようですね。
ドイツのヒトラーによるナチズムと、競争しながら協力したりして、ファシズムの存続につながったとか・・・。
そして、ドイツによって開始された第二次世界大戦に参戦、という構図のもとで、イタリア北部共和ファシスト政権が出来て、そのため国民はドイツ軍と新ファシスト政府と戦うことを迫られることになって、抵抗運動に発展していったのではないかと・・・。
このあたりのイタリアの政情、背景は、大変複雑でわかり難いですね。

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