徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「海辺の生と死」―奄美の自然を背景に戦後文学史に残る伝説的夫婦の愛の実話―

2017-08-09 17:00:00 | 映画

 映画にもなった文学作品「死の棘」の作家、島尾敏雄島尾ミホの出会いのときを描いている。
 島尾敏雄「島の果て」島尾ミホ「海辺の生と死」ほかの作品を下敷きにして、越川道夫監督が念願の映画化を果たした。
 彼にとっては、「アレノ」2016年)に続いての2作目の監督作品だ
 奄美の自然と神への尊敬を核に、濃密な愛のドラマが展開する。
 二人の恋物語は、神話的ムードで語られていくが、概して静謐で寡黙な映画である。




昭和19年末(12月)の奄美カゲロウ島(加計呂麻島)・・・。

大平トエ(満島ひかり)は、国民学校(のちの小学校)の代用教員として働いていた。
そこに、新しく駐屯してきた海軍特攻艇の若き隊長朔中尉(永山絢斗)と出会う。
朔が、兵隊の教育用に本を借りたいと言ってきたことから知り合い、互いに好意を抱き合う。
島の子供たちにも慕われ、軍歌ではない島唄を歌うことを好む軍人らしくない朔に、トエは激しく惹かれていく。

人目につかぬように逢瀬を重ねる二人だが、戦況は刻々と悪化していた。
米軍が沖縄を占領し、広島に原爆が投下され、ついに朔の部隊が出撃することになる。
トエは母の遺品の喪服を着て、担当を胸に抱き、家を飛び出すと、いつもの浜辺へと無我夢中で駈け出して行くのだった・・・。

日本の敗戦が近づき、島も空襲にさらされるさなか、生と死の極限の状況に置かれた二人の感情が純化し、激しく燃えさかる。
それまでトエと朔は、島に流れるゆったりとした時間のように、自らの感情を醸成させていたのだった。
この作品は、トエというひとりの女性の側からの愛の物語である。
ヒロイン満島ひかりがすべてを体当たりで演じていて、特筆に値する。

島の風土、文化、島唄がふんだんに取り入れられ、音感、色彩感豊かに、ストーリーと不可分のものとして盛り込まれている。
これらは、見方によってはカゲロウ島(加計呂麻島)の主役なのだ。
奄美大島と加計呂麻島で実際に撮影された映像は、南の島の魅惑で溢れ、満島ひかりや島の子供たちの歌う島唄も、エキゾティックなこの世界に否応もなく誘い込む。
満島ひかりが話す島の言葉にも神秘性が感じられ、ドラマにもよく溶け込んでいる。
彼女の情念溢れる演技を見ていると、実在した島尾ミホがまるで宿ったみたいで、「死の棘」で描かれたのちに精神を病む妻を想うと、何か通じるものがあるようで、哀切を極める。

越川道夫監督「海辺の生と死」は、上映館が満席になるほどの盛況だったが、なかなかの意欲作とは認めても、ドラマの2時間40分はいかにも長すぎる。
セリフも特別多いということはなく、間合いが長くスローテンポで、いささか飽きてくるところもある。
そのせいか上映中に、ため息交じりの声を上げたり、欠伸をする男性がいたのもうなずける。
ラストシーンも極めて淡白だし、単に戦争を背景にしたロマンティックな物語ではない。
夫である島尾敏雄の、若かりし日を好演する永山絢斗も抑えた演技に好感が持てる。
自身も奄美にルーツを持つ、ヒロインの満島ひかりの4年ぶりの単独主演作ということで、その存在感も確かなものといえそうだ。
        [JULIENの評価・・・★★★☆☆](★五つが最高点
次回はフランス・イタリア合作映画「歓びのトスカーナ」を取り上げます。 
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