徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「チャイルド/森に消えた子供たち」―国家の不条理に逆らう恐怖と葛藤―

2015-10-05 16:30:00 | 映画


 犯罪そのものを認めようとしない、スターリン政権下の旧ソ連で起きた連続殺人事件を追う、捜査官の物語だ。
 “理想国家"では殺人はありえないとする、旧ソ連の独裁者スターリンの信条に従えば、殺人事件が本当に起きたとしても、それはなかったことにされるのだ。
 そして、そんなことが実際にあったのだ。

 英国トブ・ロブ・スミスのこの事件を基にした小説「チャイルド44」を、スウェーデン出身ダニエル・エスピノーサ監督が映画化した。
 ドラマは、まがまがしくサスペンスフルな設定で、国全体が独裁者によって啓蒙されていく中、正義を貫き真実にたどり着こうとする夫婦の物語もあって、大きな見どころのひとつだ。
 圧政下において、自分が最善を尽くして生きようとする人々を描いた作品だ。
 実際には1978年から90年にかけて起きた事件を、スターリン政権下の53年に置き換え、国家に逆らう個人の恐怖とそれでも正義を求める一人の男の誠実さを際立たせる。



1953年、スターリン政権下のソ連・・・。

子供たちの変死体が次々と発見される。
年齢は9歳から14歳で、全裸の状態で胃は摘出され、山間の地にもかかわらず死因は溺死だった。
だが、“殺人は国家の掲げる思想に反する”として、すべては事故として処理される。

国家保安省で反体制派を取り締まるエリート捜査官レオ(トム・ハーディ)は、スパイ容疑のかかる妊娠中の妻ライーサ(ノオミ・ラパスをかばって、ともに田舎町へ左遷される。
彼らはここの警察で、レオの左遷前に、同僚の息子が殺されたのと同じ手口の猟奇殺人と遭遇した。
子供たちの死は事故死として処理され、スターリン独裁国家には殺人事件はないとされているから、国家に忠実なレオもそれを一応は信じながらも、殺人犯がいることは間違いないと思っている。

教師から清掃員に格下げされたライサは、レオの仕事が怖くて結婚を承諾、妊娠も嘘だと告白した。
すべてを奪われた夫婦は、生きるために相手を信じ、そこに新たな関係も生まれる。
やがて赴任先の警察署長ネステロフ(ゲイリー・オールドマン)を巻き込み、殺人事件の捜査に乗り出すことで、国家に逆らうことになるレオの姿を追うドラマは、スリリングに展開していく・・・。

冷徹な国家保安省捜査官レオが、地位を追われ、非人間的に扱われる中で、妻との間に育つ同志愛にも似た深い愛情が素晴らしい。
レオは冷徹な面と妻を助けようとする愛も持ち合わせ、別人のように変貌するのだが、トム・ハーディの内面の苦悩をにじませる演技はなかなかのものだ。
署長の捜査にも協力することになり、44人もの被害者がいたことが判明し、レオは当局の妨害に遭い、遂には命まで狙われる。
この怖るべき不条理!
これが社会主義国ソ連だ。
どこか戦前の日本と似ている。

抑圧された陰鬱なムードの漂う中、奇怪な事件、不思議な国家のあり方について、映画は鋭く問うていく。
リドリー・スコット製作ダニエル・エスピノーサ監督アメリカ映画「チャイルド44/森に消えた子供たち」は、世界騒然(?)の傑作を描くミステリーで、複雑な恋愛ドラマの要素もがっちりと、見応え十分の一作である。
     [JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点

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2 コメント

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これが (茶柱)
2015-10-05 23:22:09
実際にはほぼ現代の80年代に起きていたって言うことの方がびっくりですね。
日本で言えばバブル絶頂期、旧ソ連では社会システム崩壊前夜と言ったところでしょうか。
そういう時代にはこういう猟奇的な事件が起きやすいのかもしれませんね。
いまの日本でも・・・ (Julien)
2015-10-09 12:46:59
奇怪な、猟奇的な殺人事件が多々起きていますからね。
平和だと思われている人の世に、こうした事件がいつも繰り返されているんですね。
時を変え、所を変え、かたちは違っても・・・。
狂って、汚れた悪魔のすみかですか。

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