中国史上、最も豪華絢爛たる唐王朝後の時代の、王家一族の愛憎の物語が誕生した。
中国映画「王家の紋章」は、「HERO」「LOVERS」の巨匠チャン・イーモウ監督の最新作だ。
これまた、壮大にして、華麗な映画が製作されたものだ。
この人の製作する映画は、いつもダイナミックだ。
とにかく、ずいぶん派手な映画が出来たものだ。(笑)
チャン・イーモウ監督は、かつてない豪華さ、そして壮大なビジュアルで、この作品を世に放った。
北京オリンピックの総合演出も務める、文字通りアジアの巨匠が、この作品で、さらなる頂点を見せつけようと言うのか。
中国唐時代の直後の王宮が背景で、中国の伝統文化の真髄を披露したかったと言うチャン・イーモウ監督の言葉通り、この作品のコンセプトは「豪華」そのもの・・・。
あらゆるセットに金箔の瑠璃が貼られ、軍隊の鎧兜までもが金ピカという作りだ。
しかも、金糸をふんだんに織り込んだ、王妃や女官の衣装がまた凄い。
西洋のローブデコルテを意識してのデザインらしいが、女性全員が、まるでメロンのように大きく強調された、胸の半分を露出している。
男性は、いやが上にも、目は白い胸に釘づけになるだろう。
「HERO」「LOVERS」も面白かった。
これは、その後に続く歴史大作で、王家一族の愛憎のドラマが展開する。
チャン・イーモウ監督は、公私にわたるパートナーだったコン・リーを13年ぶりに主演に迎えたのも話題になっている。
唐代の末期・・・。
美貌の王妃(コン・リー)は、継子の皇太子(リウ・イェ)と密通していた。
王(チョウ・ユンファ)は、素知らぬ顔で王妃に毒を盛り、皇太子も隠れて侍医の娘と情を結んでいた。
外地から帰って来た第二皇子(ジェイ・チョウ)は、やつれた王妃の姿に宮廷内の策謀を感じ取る・・・。
原案は、中国のシェイクスピアと賞せられる、劇作家ツァオ・ユーの「雷雨」という作品で、革命前の資本家一家の崩壊を描いた戯曲が下地になっている。
この戯曲は、絶対的な父権を柱とした資本家一族の崩壊を、宮廷の悲劇へと見事に昇華させた。
チャン・イーモウ監督は、この物語を時代劇にしたいと周辺の人に語ったとき、無謀なことは止めたほうがいいと言われたそうだ。
しかし、彼はこう語っている。
「誰もやっていないことだからこそ、挑戦のしがいがあるんだ。
王朝絵巻にしたのは、外は華やかだが、内実は荒廃した家族の姿を際立たせたせたかったから。
この手の虚飾は、いまもある。
舞台は過去だが、作品の精神は現代劇に近い。」
王家の掟とは・・・。
憎しみあうことであり、愛しあうことであり、殺しあうことだった。
表面だけは綺麗に取り繕いながら、家族全員が、それぞれに策謀をめぐらし、殺意を抱き合うという、凄まじい人間模様が延々と描かれる。
絡み合う愛憎は、次から次へと幾つもの悲劇を生み、やがて国をも揺るがす壮絶な惨事へと発展する!
金の円柱600本、延べ1kmのシルクの絨緞、アカデミー賞にもノミネートされた豪奢な衣装3000着、宮廷エリアを埋め尽くす300万本の菊の花々・・・。
どこをとっても、息を呑み込むほどの壮大なビジュアルは、驚愕のクライマックスとともに、さらに全身総毛立つほどの圧巻のシーンを創出する。
まあ、とにかく凄い!
これほどのスケール、これほどの絢爛、そしてこれほどの修羅・・・、それはまさにあらゆるスケールを超越した、この国でしかありえない中国版「華麗なる一族」だ。
外は金、中は毒というわけだ。
贅の限りを尽くした宮廷で、無数の女官にかしずかれ、並ぶものなき栄華の頂点に君臨する、まばゆいばかりの王家の一族であった。
絶対の権力者たる王の権威、あたりを払うような王妃の気品、真面目で心優しい皇太子、父に武力を見込まれた第二皇子の逞しさ、そして、まだあどけなさの残る第三皇子の無邪気な笑顔・・・、それが、黄金の一族の穢れなき肖像であった。
・・・しかし、その裏で、王が企てる王妃の毒殺、それを知りながら、毎日毒入りの薬を飲み続ける王妃がいた。
さらに、皇太子は王妃との不倫に苦しみ、第二皇子は母の計略に引き込まれ、第三皇子の心にはどす黒い闇が広がっていく・・・。
人々が見上げる高殿から、国中を巻き込んで、奈落の底へと堕ちていく。
華々しいまでの、王家の崩壊である。
決して、覗いてはならない黄金の裏側・・・、その禁断の秘密が、絢爛に暴かれる時が訪れる。
王妃の気高さから、悲哀、憎悪、執念、その全てを圧倒的な迫力で演じきったのは、 「さらばわが愛/覇王別姫」「SAYURI」のコン・フリー、冷徹な王を演じ、これまで見せたことのない“悪役”を極めたのは、「パイレーツ・オブ・カビリアン」のチョウ・ユンファで、女王と帝王〜、ともにハリウッドでも活躍する不動の二大スターが共演を果たしている。
コン・リーは、禁断の恋と母性の板挟みになる、女の苦悩をあますところなく体現して、圧倒的な存在感があった。
豊艶な、熟女の魅力も十分だ。
彼女は、今が黄金期かも知れない。
緩急自在の演技で、孤独や葛藤の表情は十年前とは別人のようで、チャン・イーモウ監督も舌をまくほど、凄い(!)女優になった。
とにかく、超絶のバトルも健在で、度肝を抜くようなアクションシーンの連続だ。
「HERO」「LOVERS」でも見慣れているだけに、個人的にはいささか食傷気味だ。
まず、時代考証がどうとか言わずに、文句なしに迫力満点の、胸躍るアクションを五感で堪能しろと言わんばかりである。
長らく文芸映画の巨匠と言われていた、チャン・イーモウ監督だが、武侠大作「HERO」が、驚異的な興行成績をたたき出したのを転機に、いきなり中国映画史上ナンバーワンヒットに、続く「LOVERS」も大ヒット、この「王妃の紋章」も自己記録を更新と、彼は商業映画の世界でもトップ監督となった。
アジアの人気スターたちの豪華な共演とともに、脚本、美術、衣装、音楽、アクション、CGにいたるまで、一流のスタッフの総力を結集した賜物だろう。
一言付け加えたいのは、アジアを中心に国際的な舞台で、数多くの映画音楽を担当してきた日本の梅林茂は、「LOVERS」でも素晴らしい音楽を披露してくれたが、それ以来二度目となるこの作品でも、チャン・イーモウ監督と組んで、力強い、人間の持つ内面的な辛さを惜しみなく発揮した才能である・・・。
中国映画「王妃の紋章」 ( www.ouhi-no-monsho.jp )は、娯楽映画として見れば、近頃出色の出来映えだ。
〜 閑 話 休 題 〜
「河瀬直美監督特集」
カンヌ国際映画祭グランプリを受賞した、河瀬直美監督の特集上映が
4月26日から、横浜市中区若葉町の映画館・ジャック&ベティで始まる。
(TEL: 045−243−9800)
グランプリ作品「殯(もがり)の森」のほか、劇場未公開作品を含む17作
品を一挙公開する。
26日夜には、河瀬直美監督のトークショウがある。
上映される作品は、「萌の朱雀」や「火垂」など長編もあり、河瀬監督の
これだけの作品を一挙に見られる機会はそんなにないだろう。
5月2日まで。
河瀬作品グランプリ「殯(もがり)の森」については、当ブログ欄(1月25日)
にて感想を書かせていただいた。






華麗ですねぇ・・・。その一万分の一でもあやかりたい(笑)。
「困りましたねえ」とぼやいてばかりの、どこぞの国の、最高指揮官の気難しいお顔を毎日見ているよりは、少しはましでしょう。(苦笑)