徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「教授のおかしな妄想殺人」―人生の不条理さと滑稽さにひねりを加えたダーク・コメディ!―

2016-08-07 15:00:00 | 映画


 1960年代後半から、年に1本以上は映画を撮り続けている。
 そのウディ・アレン監督の最新作だ。

 人生というものは、どこへ転がっていくのか誰もわからない。
 人間とは、どうしようもなく無力な存在だ。
 そもそも、人間の生きる意味とは何だろうか。
 目には見えない運命や偶然を受け入れながら、奇妙にすれ違う男女の運命が描かれる。
 そして、その行き着く果てには何が待っているというのか。











人生に退屈する大学の哲学科教授エイブ(ホアキン・フェニックス)は、アメリカ東部の大学に着任して間もなかった。
彼は、人生は無意味だという心境に達していた。
孤独で無気力な日々を過ごすエイブのまとった陰に、女子大生ジル(エマ・ストーン)は強く惹かれるのだった。

ある日、たまたまエイブは悪徳判事の噂を耳にした。
その瞬間から、彼の脳裏には、突拍子もない、奇妙奇天烈な考えがひらめく。
つまり妄想だ。
それは、誰にも疑われることななく、自らの手で判事を殺害するという完全犯罪への挑戦であった。
そんなことから、エイブは自らが“生きることの意味”を発見し、とたんに身も心も絶好調となり、超アクティブでポジティブな人間に大変身を遂げた。
そして、ただただ憂鬱でしかなかった彼の暗黒の日常が、鮮やかに色めきだし、一方エイブに好意を抱くジルは、まさか彼の頭の中に、おかしな妄想殺人が渦巻いているとはつゆ知らず、ますます恋心を燃え上がらせていくのだったが・・・。

ドラマそのものが唐突で、やや荒唐無稽な話なのだ。
ウディ・アレン監督、これまでも自分の人生観を反映させた幾多の分身を創造してきたが、今回の主人公エイブはとびきりユーモアに富んだキャラクターといえそうだ。
女性にはもてるし、その気もなく書いた論文も高く評価される。
でも当の本人は、さっぱり達成感や喜びを得られないでいる。
そんな絶望の闇(!?)に囚われている男が、突然思い立った完全犯罪への挑戦によって、とうの昔に失われていたバイタリティを取り戻し、別人のように溌剌とした行動派へと大変身していくのだ。
意外な展開だ。

アレン前作「マジック・イン・ムーンライト」(2014年)にも出演したエマ・ストーンは、知性のにじむ幅の広い演技力ともにコミカルな味わいをよく出しているし、自分を見失ってしまった教授エイブ役のホアキン・フェニックスも、アレンの演出する画面で見せる飄々とした演技もなかなかだ。
何が有意義なのか。
有意義たる人生を追い求める狂気やエゴや、勘違いをまき散らす、哲学科教授の皮肉と波乱に富んだドラマは、アレンの真骨頂といえるだろう。

アメリカ映画「教授のおかしな妄想殺人」では、テンポのきいた、ねじれにねじれる展開が続き、ウディ・アレン監督の遊び心満載といったところか。
危険極まりない妄想に、燃え上がる恋の情熱、噛み合いそうで全く噛み合わない男女の運命を描きながら、笑わせるところでは面白く笑わせる。
全編に流れるブラック・ユーモアと毒気を含んだ痛烈な風刺と皮肉・・・、不道徳で、人をだまして驚かせる手品師のようで、殺人を妄想し実行に移すなど、ちょっとやりすぎにも見えるが、そこがアレン喜劇たるゆえんか。
ラストはとんでもない展開だ!
・・・御年80歳にしてアレンが見せるのは、恋愛と犯罪が絡み合って、とにかく異彩を放つ妄想ドラマだ。
     [JULIENの評価・・・★★★☆☆」(★五つが最高点
次回は韓国ドキュメンタリー映画「あなた、その川を渡らないで」を取り上げます。


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ユーモラスな (茶柱)
2016-08-07 21:36:10
作品が多いですよね、ウディアレン。
それでいて考えさせられて、奥が深くて。
定期的に・・・ (Julien)
2016-08-08 15:58:51
毎年必ず1本ですか。
素晴しいですね。
勿論、ときには駄作もないことはないでしょうが・・・
いつまでも、現役で頑張ってもらいたいですね。
いい映画を作ってね・・・。はい。

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