徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」―これぞ働けど貧しき格差社会に見る明日の日本の姿―

2017-05-03 16:00:00 | 映画


 人間は、極限の貧しさの中で何ができるのか。
 「麦の穂を揺らす風」(2006年)、「天使の分け前」(2012年)のイギリスを代表する社会派の巨匠ケン・ローチ監督が、イギリス社会が抱える不条理を描いた。
 これまでも、貧しい労働者を多く描いてきたローチ監督だが、2014年に一度引退宣言をしたが、それを撤回して本作を製作した。
 カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞作品だ。

 ひとりの初老の男が、官僚主義的な上から目線の行政手続きに振り回され、ごく普通の生活をするのにいかに苦労しなければならないか。 そのことをとくと見せる。                      
 現代社会の歪みや矛盾を鋭く突いた、「人間の持つ尊厳」を描いた新作である。
 そうなのだ。
 手に職を持っていながら、誇り高く生きてきた男でさえ、人としての尊厳を奪われ、失意に陥る。
 弱者は弱者でしかなく、非人間的なシステムによって追い詰められていき、行き場まで失っていくのか。



イギリス・ニューカッスルで大工として働くダニエル・ブレイク(デイヴ・ジョーンズ)は59歳、心臓を患い、医者から仕事を止められている。
国の援助を受けようとするが、手続きなど制度上の複雑さもあって満足に受けられず、就労を促される始末だ。
そんな中、ダニエルは職業安定所でケイティ(ヘイリー・スクワイアーズ)と出会った。
彼女は2人の幼い子供を連れていたが、ロンドンから引っ越してきたばかりで、約束の時間に遅れたため、給付金を受け取ることができなかった。
ダニエルは、仕事もない彼女のために何かと手助けをする。
その家族との間に温かなきずなが生まれるが、それだけで生きていけるわけもなく、厳しい現実が彼らを追い詰めていく・・・。

愛する妻に先立たれ、一人暮らしのダニエルが、二人の子供を抱えたシングルマザーと出会い、二人の間に通いあう弱者同士の友情がほのぼのとして温かい。
女の方は、電気代さえも払えない生活を送っていて、家族を食べさせるために怪しげな店で働き始める。
ダニエルは部屋のあちこちを修理したり、娘に木彫りのモービルを作ってやったりと、自分のことにも満足していないのによく面倒を見る。
彼らに悲しさやみじめさも漂うが、希望は捨てていない。

市民のための役所が、規制をふりかざして市民の要望を拒むという場面にお目にかかることがある。
万事が親方日の丸で、この映画のようなことは、日常茶飯事である。
「下流老人」という言葉がある。
この映画を観て思い出すのだ。
決していい言葉ではないが、厳しい社会情勢を象徴する言葉だ。
未来を照らすメッセージは、なかなか見えてこない。

かつての名言「ゆりかごから墓場まで」は、今は昔の語り草となってしまった。
拡大する格差や貧困に対して、人は何ができるか。
助け合い、支え合うことで、この世の理不尽、不条理と対峙する。
高齢者にとって、厳しい時代が訪れてきている。
それだけは確かだ。

イギリス・フランス・ベルギー合作映画「わたしは、ダニエル・ブレイク」の主人公は、苦境の中でも人としての誇りを持っている。
お金がなくて、国の援助もままならない。
これがどういうことを意味するか。
この作品に登場するダニエルやケイティの友情や連帯がもたらす、ささやかな光だけが救いのように見える。
愚直すぎるほどに真面目な作品だ。
本当に大切なものは何か。
悲運の中にあっても、善意やユーモアを失わない人物に、胸が打たれる。
御年80歳、ケン・ローチ監督の集大成ともいえる感動作である。
この作品の上映館は、補助席が用意されるほどの満員人気で、これまたびっくりだ。
       [JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点
次回はアメリカ・イギリス合作映画「ラビング 愛という名前のふたり」を取り上げます。

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2 コメント

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こういう (茶柱)
2017-05-04 13:41:23
貧困問題は・・・。
だいたい貧困であるという時点で社会的発言力は皆無に近く、与論を決定していくのはおおよそ富裕層。

あとは推して知るべし。
人類がある限り・・・ (Julien)
2017-05-07 18:06:42
まず格差社会はなくならない気がしますし、貧困層もなくならないでしょう。
全人類、誰もが絶対平等などありえない話です。
この世は、一体どうしてそうなったのでしょうかね。

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