徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「オリーブの樹は呼んでいる」―樹齢二千年の一本のオリーブの巨木が主人公となるヒューマン・ドラマ―

2017-06-14 11:30:00 | 映画


 スペイン期待のイシアル・ボジャイン監督と、「わたしは、ダニエル・ブレイク」(2016年)の脚本を手がけたボジャイン監督ポール・ラヴァーティが組んだ作品だ。
 経済のグローバル化や環境問題などを絡めて、現代社会の実相と家族の再生をユーモアをこめて描いている。

 オリーブの樹というと、あちらでは太陽の樹とされ、地中海沿岸では勝利や平和の象徴とされてきた。
 スペインも例にもれず、樹齢2千年に及ぶオリーブの樹は珍しくない。
 そんなオリーブの古木が売り払われたことから引き起こされる騒動が、ヒューマンタッチで洒脱に描き出される。




スペインのバレンシアにある田舎町、カネット・・・。
アルマ(アンナ・カスティーリョ)は20歳、養鶏場で働いている。
彼女は、オリーブ農園を営む祖父ラモン(マヌエル・クカラ)を愛していた。
しかし経営難から、父ルイス(ミゲル・アンヘル・アラドレン)は、祖父が大事にしてきた、樹齢2千年のオリーブの樹を売り払ってしまう。
ラモンは意気消沈し、ついには食事もしなくなってしまった。

オリーブの樹を取り返せば、祖父はまた元気を取り戻すと考えたアルマは、叔父アーティチョーク(ハビエル・グティエレス)らを嘘で丸め込み、今はドイツにある売却先へ大型トラックで向かうことを決心する。
アルマには資金もなく、オリーブの樹を取り戻せるというあてもなかった・・・。

孫娘らが、スペインからドイツまで樹木を取り戻す旅に出る。
誰が見てもドンキ・ホーテよろしく無謀な旅であった。
アルマは嘘をつき、叔父と同僚のラファ(ペップ・アンブロス)を振り回すなど、感情のおもむくままに奔放に行動するので、先の読めないロードムービーとなる。
今は、ドイツのデュッセルドルフの大企業が所有しているオリーブの樹を、奪還することができるのだろうか。

祖父を敬愛する、アルマの純粋さがドラマの中で際立っている。
何とも向う見ずな彼女の行動にはらはらさせられるが、その先に一筋の希望が見えないでもない(?)。
アルマがこの物語を牽引する。
彼女の荒唐無稽な計画が展開され、そんな役を好演する無名のアンナ・カスティーリョは、この作品でスペイン・ゴヤ賞新人女優賞受賞した。
祖父役の老人は実際にオリーブ園の主人だという。

ヒロインはともかく、2千年ものあいだ根を張っていたスペインの大地から引き抜かれ、ドイツへと売られたしまったオリーブの樹こそが、この映画の立派な主役だ。
異国の地からオリーブの樹の声なき声が聞こえてくるような、そして一度は壊れてしまった家族のそれぞれの心の声が聞こえてくるようだ。
ヴィクトル・エリセケン・ローチの映画など30作以上の映画、テレビに出演し、女優から監督へと転身した、イシアル・ボジャイン監督スペイン映画「オリーブの樹は呼んでいる」は、骨太の脚本に支えられて、家族、世界、自然、未来と・・・、多くのことを語りながら、微笑みを忘れさせない感動作となった。
      [JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点
次回は日本映画「22年目の告白―私が殺人犯ですー」を取り上げます。

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2 コメント

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オリーブの古木 (霜葉)
2017-06-14 12:40:57
5~6年前に、アンダルシア地方の樹齢1000年と言われるオリーブの巨木が、小豆島に移植されました。
古木は同じような樹形になるのでしょうか、よく似ています。小豆島の巨木にも同じようなドラマがあったものと思います。鶴岡八幡宮の大銀杏が倒伏し、まさに強い喪失感に沈んだ時期と重なった時期でした。この映画は自然保護とかの理屈ではなく、人の心がテーマなのでしょうか。
霜葉様・・・ (Julien)
2017-06-18 16:56:07
この映画で使われたオリーブの樹は、1000本以上の樹から枝ぶりのとくに美しい、直径8mもある1本が選ばれたそうです。
その樹を切ってしまうシーンでは、実際には切られていません。樹はちゃんとあの場所に植わっています。
この樹とドイツで再開するシーンのために、生木を使わず石膏で型を取って、バラバラにしたレプリカを作って運んだそうで、多額の費用もかかって、セキュリティの問題や火災の問題などもあって、いろいろと大変だったようですが・・・。

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