徒然草

つれづれなるままに、日々の見聞など、あれこれと書き綴って・・・。

映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」―忘れられぬ痛みと傷を抱えて生きていくことのたとえようのない重さと悲しさと―

2017-07-06 17:00:00 | 映画


 アカデミー賞主演男優賞、脚本賞受賞した、重厚で感動的な人間ドラマである。
 「ユ・キャン・カウント・オン・ミー」(2000年)ケネス・ロナーガン監督は、越えようとしても越えられない痛みから再生しようとする、孤独な心に寄り添うような秀作を生み出した。

 悲しみを抱えて生きることは重すぎる。悲しすぎる。
 人間の再生を、優しく丁寧に描いて珠玉の作品となった。
 ささやかでも確かな手ごたえを感じさせてくれる作品で、静かに心に染み入る映画だ。





アメリカ・マサチューセッツ州の小さな港町マンチェスター・バイ・ザ・シー・・・。
ボストンで便利屋として生活していたリー(ケイシー・アフレック)は、兄のジョー(カイル・チャンドラー)が突然亡くなって、故郷の町に舞い戻ってくる。
辛い過去のあるこの町に・・・。
ジョーの遺言で、16歳の息子パトリック(ルーカス・ヘッジズ)の後見人にリーを指名していたが、リーにはその自信がなく、パトリックも充実した高校生活が変化することを望んでいなかった。

リーはショックを隠せない。
それは、二度と戻ることはないと思っていたこの町で、かつて自分が捨てた過去の悲劇と向き合わねばならぬことを、意味していたからだ。
リーは心を閉ざし、頑なに他人との関わりを拒絶する。
彼の深い心の傷はまだ癒えていない。

もともと、彼はどうして心も涙も思い出も、すべてをこの町に残して出て行ったのか。
父を失ったパトリックとともに、リーは新たな一歩を踏み出すことができるのだろうか。
リーの脳裡には、自身の妻ランディ(ミシェル・ウィリアムズ)や、3人の幼子たちとこの地で過ごした過去の記憶が甦る・・・。

主人公リーを演じるケイシー・アフレックの回想と現在のシーンは、まるで別人のようだ。
演技がそうさせているのだ。
それは、彼の過ちによって起きた悲劇が、いつまでも自分を責め続けているからだ。
父を失った甥のパトリックとリーの交流が主軸となるこのドラマは、二人がともに空白を抱え、なかなか理解し合えない。
様々な会話や体験を通して、互いが抱える悲しみや苦しみを受け止めていく描写は、しかし繊細で細やかだ。

ドラマは現在と過去のパートを並列して描いていて、生きることの哀歓を鮮やかに表出する。
決して大声ではなく、次第に明かされていく過去の映像にも、作り手の主人公に寄り添う態度が感じられる。
暗く重い話なのに、ちょっとしたユーモラスなシーンもあったりして、これといった余計な装飾もなく、淡々としてドラマは描かれる。
アフレックの演技が光っている。
生きることの尊さがにじみ出ている。
港町の寒々とした光景の中で、徐々に明らかにされていく過去が痛ましく、元妻役のミシェル・ウィリアムズが「私たちの心は壊れてしまった」と語りかけるシーンが印象的だ。
マット・デイモンがプロデュースし、ケネス・ロナーガン監督が描くアメリカ映画「マンチェスター・バイ・ザ・シー」は、ラストで示されるかすかな希望と温もりとともに、間違いなく今年の注目の一作となるだろう。
          [JULIENの評価・・・★★★★☆](★五つが最高点
次回はフランス映画「アムール,愛の法廷」を取り上げます。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
演技の (茶柱)
2017-07-07 23:33:57
美味い俳優のでる映画は良いですね、やっぱり。
当然ですね・・・ (Julien)
2017-07-09 14:54:15
俳優さんは沢山いますけれど、本当に上手い俳優さんはそんなにはいませんからね。
いい映画は、いい脚本といい俳優さんと監督で決まりますね。
しかし、本当に良い映画となると、これが意外と少ないものです。はい。

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