今日は、医療法人の公開医学講座に出席して、「動脈硬化とは?3つの危険因子とその予防について」受講しましたので、その内容を投稿いたします。
講師の方は、健康管理センター医長 田中麻美女史でありまして、内容は、動脈硬化の危険因子と防止のための食習慣改善等についてでありました。
1 動脈硬化の進み方
人は、加齢や高血圧、糖尿病により、血管内皮細胞が刺激を受け障害を受ける。また、血管内腔にマイクロファージやコレステローが沈着し、弼腫を形成し血管内が狭くなる。更に弼腫を覆っている膜が破れると血小板の凝集が起こり、血栓ができ血管の内腔が詰まる。結果、血流が遮断され組織の一部が死ぬ。このように、人は、血管とともに老いている。それは、動脈硬化であります。
2 動脈硬化が原因で起きる病気
(1) 脳卒中とは、
脳梗塞(脳血栓、脳塞栓)脳出血、クモ膜下出血、一過性脳虚血発作を云う。何れも脳内の血管障害であります。
(2) 動脈硬化性疾患
① 動脈硬化の原因3つの危険因子は、高血圧、高コレステロール、糖尿病による。これが、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症の病気を引き起こす要因となっている。
② 日本人の死因
日本人の死因の1/3は、動脈硬化疾患によるものと言われています。平成23年厚生労働省の人口動態統計によりますと
ア 悪性新生物 28.5%
イ 心疾患 15.5%
ウ 肺炎 9.9%
エ 脳血管疾患 9.9%
オ 不慮の事故 4.6%
カ 老衰 4.2%
キ 自殺 2.3%
ク その他 24.9%
となっております。
(3)危険因子(高血圧)
高血圧は、自覚症状がないまま、ある日突然心筋梗塞や脳卒中を引き起こす原因となることから、サイレントキラーと呼ばれています。また、高血圧は最も有病者多い病気で、日本人の約4、000万人にのぼると云われているが、最近は昔と違い各人が塩分を摂らないようにしている事から、減少している。
① 高血圧の発症因子
高血圧の発症因子としては、運動不足、ストレス、肥満、食塩及び遺伝子(カリクレイン・キニン系、レニン・アンジオランシン系、交感神経系、ナトリウム調節系)が関係している。
② 血圧の基準値
血圧の基準値は、次のように
ア 高血圧 :140/90以上
イ 至敵血圧 :120/80未満
ウ 正常血圧 :130/85未満
エ 正常高値血圧:130-139/85-89
③ 家庭での血圧測定
ア 朝は、起床後1時間以内、排尿後、朝の腹薬前、朝食前、座位1~2分安静後
イ 晩は、就寝前、座位1~2分安静後
④ 診察室血圧
ア 白衣高血圧 自宅では正常値であるが、病院で測ると高いことを云う。
イ 仮面高血圧 自宅では正常値であるが、職場で測ると高いことを云う。
ウ 早朝高血圧 一般的に高い
エ 夜間血圧 正常型、非降下型、夜間上圧型(心疾患になることが高い)がある。
⑤ 血圧改善
血圧改善に気を付けなければならないことは、何か。
ア 減塩 食塩6g/1日未満
イ 野菜 果物を摂取、肉より魚を摂取する。
ウ 減量 BMI25未満
エ 運動 有酸素運動を毎日30分以上
オ 節酒 控えめ
カ 禁煙 吸わない
⑥ BMI(体格指数)求め方
BMI=体重(Kg)÷{身長(m)×身長(m)}
BMI指数22位が正常
判 定 やせ(低体重) 正常 肥満
BMI 18.5未満 18.5 以上 25.0 以上
25.0 未満
⑦ 食品の塩分量
ア 塩 小さじ1杯 5g
イ 濃口醤油 大さじ1杯2.5g
ウ 味噌 大さじ1杯2.2g
エ 梅干 1固1.6g
オ 味噌汁 1杯1.3g
カ ラーメン 1杯5.5~7.6g
(4) 高コレステロール血症の疫学研究
フラミンガム研究(1971年)ボストン郊外のフラミンガム地域で5,000人あまりの住民を対象とした追跡観察研究である。目的は、死因の首位を占める虚血性心疾患発症の要因解明に当ったり、1948年に始まった。その結果、先ず、総コレステロール高値、高血圧、喫煙の3者が、虚血性心疾患の危険因子として浮上した。
① 冠動脈疾患死亡の相対危険度
日本人のパターンとして、総コレステロールが159~199までは、冠動脈疾患死亡の相対危険度(男女)1以下であるが、200から260までは、数値が上ることに、限りなく相対危険度が2に近ずく、しかし、260を超えると相対危険度は急上昇する。
② コレステロールの種類と役割
ア HDL(高比重リポ蛋白)は、善良コレステロールと云われている。
イ LDL(低比重リポ蛋白)は、悪玉コレステロールと云われている。
ウ LDLは、食物から取り入れられたり、肝臓で合成されたコレステロールを血液を通して全身に運んで、細胞膜やホルモンの合成に使われます。 ところが、血液中のLDLが増えすぎると血管壁の傷ついたところなどに付着し、結果的に血管を細くして、動脈硬化の原因になってしまいます。
一方、HDLは、血管に付着したコレステロールを取り去って肝臓に運ぶ働きをします。
③ リポ蛋白の種類と役割
ア カイロミクロンは、食物中の脂質を小腸から吸収し肝臓、体内筋肉などの場所へ輸送する。
イ VLDL(超低比重リポ蛋白)主に中性脂肪を脂肪組織や筋肉などの末梢に脂質を供給する役割
ウ LDL(低比重リポ蛋白)コレステロールを全身の組織へ運ぶ
エ HDL(高比重リポ蛋白)全身の組織から、余分なコレステロールを集めて肝臓に運ぶ
④ 脂質異常症の基準値
ア 総コレステロール 22mg/dl未満
イ LDLコレステロール(悪玉) 140mg/dl未満
ウ HDLコレステロール(善玉) 40mg/dl以上
エ 中性脂肪 150mg/dl未満
⑤ 脂質異常症の治療
ア 食事療法として、エネルギー摂取量を抑え、肉より魚や大豆を多くとる。また、食物繊維を多く摂り、コレステロールの多い食品を控える。更に、アルコールを抑える。
イ 運動利用法として、1日30分以上の運動を毎日続ける。心疾患のある人は主治医と相談し適切な運動量とする。
⑥ 適正なエネルギー量とは
ア 標準体重(Kg)= 体長(m)×体長(m)×22
イ 1日の必要エネルギー量(KcaI)=標準体重×活動係数(25~35Kcal)単的には30 Kcal
エ 身体活動量の目安
ア 軽労働(デスクワーク中心の人や主婦など)25~30 Kcal
イ 普通の労働(立ち仕事が多い職業) 30~35 Kcal
ウ 重労働(力仕事が多い職業) 35 Kcal
⑦ 主な食品のコレステロール値
食品100g当たり
食品名 コレステロール エネルギー
(mg) (kcal)
卵黄 1,400 387
すじこ 510 282
鶏卵 420 151
豚レバー 250 128
バター 210 745
えび 170 83
マヨネーズ 卵黄型 150 670
鶏肉(皮を含む) 98 200
豚肉 71 225
牛肉 67 182
(4)増え続ける糖尿病
① 日本で糖尿病が強く疑われる人は、約890万人、糖尿病の可能性が否定できない人は、約1,320万人糖尿病かその予備軍と推定された人2,210万人いるといわれている。この傾向は、アジア全体としても多くなっている。
② 2型糖尿病の発症は、肥満、運動不足、食べ過ぎによるインスリン抵抗性や糖尿病になり易い体質即ち、インスリン分泌低下、 ←糖毒性→2型糖尿病 いわゆる遺伝子因子と環境因子がある。
③ 日本人は僅かなインスリン抵抗性の増大で糖尿病を発症する。
ア 数万年前→ 伝統的食習慣→ 60年前→ 飽食時代
イ *日本人→ インスリン分泌が少ない→ 小太り→ インスリン分泌小 → 破綻
*日本人→ インスリン抵抗性少ない→ 小太り→ 僅かなインスリン抵抗性の増大→ 破綻
(5)糖尿病の検査
① 血糖値
空腹時 126mg/dl以上(正常110mg/dl未満)
随時 200mg/dl以上(正常140mg/dl未満)
② ヘモグロビンAlc値(NGSP値)6.5%以上(正常4.6~6.2%)
(6) 糖尿病の治療は?
① 食事療法
適正なカロリーの摂取、甘いもの、炭水化物の過量の摂取は禁物、良く噛んでゆっくり食べることにより、満腹感が感じられて過食を防げる。常に、腹八分目を心がける
② 運動療法
肥満の解消とカロリー消費のために、運動を欠かさずに励行し、歩行など有酸素運動を1回30分以上とし、週に3日~5日
③ 薬物療法
6種類の飲み薬の内服治療、注射薬(インスリン、GLP-1受容体作動薬)
④ 糖尿病治療の目標は?
ア 三大合併症(網膜症・腎症、神経障害)
イ 大血管障害(心筋梗塞、脳梗塞など)
これらを予防し、健康な人と変わらないQOL(生活の質)と寿命を確保すること。
⑤ 成人途中失明の原因疾患
ア 緑内障
イ 糖尿病網膜症
エ 網膜色素変性症
⑥ 糖尿病網膜症の進展
網膜の血管に障害が発生し、進むと血管が破裂することもある。糖尿病の網膜症は、次の3つの段階で進んでいく。
ア 単純網膜症
イ 増殖前網膜症
ウ 増殖網膜症
3 生活習慣病
(1) 人工透析
日本透析医学会統計調査委員会2002年の資料によれば、透析導入の最も大きな原因は、糖尿病で、これが年々増加している。
(2) 糖尿病性神経障害
糖尿病性神経障害による全身の症状として、外眼筋麻痺、顔面神経麻痺、立ちくらみ、無痛性心筋梗塞、胃無力症、下痢・便秘、しびれ・痛み、排尿困難、インポテンス、こむらがえり、感覚麻痺など、
(3) アルコールの摂取は
ア 日本酒なら1日1合
イ ビールは中瓶1本弱
ウ 週に3~4日以内
エ 糖尿病の治療は出来れば禁煙が望ましい
(4) メタボリック症候群
ア ウエスト周囲径 男性85cm以上 女性90cm以上
イ 高中性脂肪血症 TG 150mg/dl以上 かつ/または低HDL-C血症 HDL-C˂40mg/dl
ウ 収縮期血圧 130mmHg以上 拡張期血圧85mmHg以上
オ 空腹時高血糖値 110mg/dl以上
メタボリックシンドローム診断基準は、ア必須に加えイ~オまでの2項目以上満たす者を云う.
(5) メタボリック症候群の病態模式図
(6) 肥満
肥満は、動脈硬化を引き起こす全ての生活習慣病の発症やメタボリック症候群の原因となります。肥満を解消すれば、多くの検査値が驚くほど改善します。
体重1Kgの減少は腹囲1cmの減少になります。体重と腹囲を目安にダイエットを考えましょう。
(7) 禁煙
タバコを吸うと一時的に血圧が上がり、血液も固まりやすくなり、動脈硬化の原因となりますので、タバコは止めましょう。今は、禁煙補助薬があります。医師に相談してください。
(8) 血圧等の目標値
血圧等の目標値は、
ア 体重 BMl 25未満
イ 血圧 若年・中年者 130/85未満
高年者 140/90未満
ウ 適正なカロリー摂取、週3日以上の運動
エ 適正な飲酒
オ 禁煙
(9) 生活習慣病は予防が大事
高血圧、高コレステロール血症、糖尿病、肥満、喫煙 = 動脈硬化