幽霊パッション 第三章 水本爽涼
第三十七回
「ほう…、何をされた? 実に興味深い話だ。どんな暗示かね?」
「いや、暗示というより、私の身に危険を及ぼした、と云った方がいいでしょう。分かりやすく云いますと、私をゴーステンの時よりさらに一歩、霊界の狭間(はざま)へ近づける暗示をしたのです」
「そりゃ君! 危険じゃないか。下手すりゃ、完璧に君は死んじまって霊界入りだな」
「はい、そうなんですよ」
上山は、少し事の仔細が話せたので落ちついてきた。
「で、今日は、どういう用件で?」
「ええ、それなんですが、今云いましたように、私と平林君が活動危機になってるんですが、教授に何かいいアイデアはないかと、ご相談を…」
「ふ〜む。しかし、命じたのは霊界のお偉方で、そうなるのを妨(さまた)げるというのも霊界のお偉方だというところが、今一つ、私には分からんのう」
「はあ、それは如意の筆のせいなんです」
「如意の筆? なんだね、そりゃ?」
「はい、幽霊の平林君が霊界番人さんから授かった霊験あらたかな筆なんです。荘厳な霊力を有し、願ったことは叶う、というもの凄い筆なんです」
「その筆のせいで、君達の活動が危機だと…」
「はい! 事情は先ほど話したとおりなんです。私もこの世に未練は、まだまだありますから、アチラへは…」
「だよな。ははは…」
滑川(なめかわ)教授は呑気に、また笑った。そして、「いや、失敬!」と、すぐに謝った。
「どうでしょう。何か手立ては?」
「そうだな。ひとつ云えるのは、小さいことから始めりゃ、苦情は出ないだろう、ってことだな。武器輸出禁止条約だって、ニュース的に大きいと云やあ大きいが、直接、人類がどうこうなる、ってことでもない。もちろん、効果は絶大なんだろうがな。そういうやつを活動の軸にすりゃ、どうかね?」
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