水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

思わず笑えるユーモア短編集-12- 細々(こまごま)と

2017年01月12日 00時00分00秒 | #小説

 テレビがいろいろな党のいろいろな質問と、政府によるいろいろな答弁を映し出している。
「ほう! …委員会か」
 委員会の名が瞬間、口に出ず、吉川は暈(ぼか)すように呟(つぶや)いた。
「日本は細々(こまごま)と党が多いな…。これじゃ選べんから票が少ないはずだ…」
 最近、海外から日本へ帰国した吉川には今の政治が分からず、好きなように言えた。しばらく観てテレビを消すと、吉川はキッチンへと向かった。小腹がすいたから何か食べよう…と思ったのだ。冷蔵庫の中には細々といろいろなものが入っていた。アレもいるだろう…コレもいるだろう…と選ばず適当に買ったからか、相当な量が入っていた。まあ海外じゃ、こんなものさ…と、吉川は自分の行動に無理やり正当性を持たせ、納得した。
 適当に食べようと思っていたが、案に相違して何を食べるかで迷い、殊(こと)の外(ほか)、時間を取られた挙句(あげく)、結局、カップ麺になった。細々とあるのは迷うし腹が立つ…と吉川は、また思った。カップ麺を食べ終えると、久しぶりに遠出して車を飛ばすか…と、吉川はドライブを思い立った。クローゼットを開けると、また着るものが細々と入っていた。吉川は何を着る…と、また迷った。コレっ! という気に入ったものが、今一つなかったのだ。細々とあるのも考えものだな…と吉川は衣類を整理することにし、選択し始めた。だが、いざ捨てようと思ったものが、こういう場合もあるぞ…と思うと捨てられず、結局、時間をかけて分別した結果、ほとんどの衣類が残っていた。
 票は入れられないわ、食べるものは迷うわ、外出は出来ないわ、衣類は残るわ…など、細々とあると、選択に手間取り、好結果が得られない。

                            完


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